「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の野崎幸助さん(当時77歳)を殺害したとして起訴された元妻の須藤早貴被告(28)が、別の男性から現金をだまし取ったとして詐欺罪で追起訴された事件の論告求刑公判が5日、和歌山地裁(福島恵子裁判長)であった。検察側は懲役4年6月を求刑、弁護側は詐欺罪の成立について争う姿勢を改めて示し、結審した。
起訴状などによると、須藤被告は2015年3月~16年1月に3回、男性から計約2980万円をだまし取ったとされる。アルバイトで働いていた札幌市のキャバクラに客として来た男性と知り合い、壊してしまった美容専門学校の機械の弁償金や海外留学の準備金などとして受け取っていたという。 これまでの公判で、証人として出廷した男性は「美容師になりたいという夢を応援したかった」「須藤被告に対する性的な関心はなかった」という趣旨の証言をしていた。 検察側は論告で「(男性は)記憶に基づいて率直に証言しており、高度の信用性を有する」などと主張。詐欺は成立するとした上で、動機や経緯に酌量の余地はなく、反省の態度が認められず、刑事責任の重大性は明らかだと主張した。 弁護側は、男性について「うそにうそを重ねた」と指摘。知り合ってから1年以内に、立件されていない分を含め3千万円以上を須藤被告につぎこんでいる点を「純粋な『応援』であるはずがない」「破廉恥な行状を隠したいためにうそをついていることを前提に評価しないといけない」と主張し、詐欺罪が成立するとは言えないと訴えた。 一方、詐欺が成立するとしても、被告は当時19歳で、子どもじみたやり方だったとも主張。これらに相応な処分を考えるべきだと裁判所に求めた。 論告・弁論の後、須藤被告は「(男性は)明らかにうそをついていました。そこを見落とすことなく判決を下してもらいたいと思います」と述べた。